

この記事では、井戸水と水道水の違いや井戸水を使用するメリット・デメリットについて詳しくご紹介していきます。
当然ながら井戸を掘れる場所がなくてはいけない

と思っていても、井戸水を使用するためには当然井戸が必要になります。
集合住宅や賃貸住宅にお住まいの場合は、井戸を設置するという事は難しくなってしまいます。
持ち家の戸建てにお住まいの場合でも、新たに井戸を掘削するとなると、井戸を掘る場所、井戸ポンプを設置する場所、メンテナンス時のためのスペースなどを確保するために、それなりの面積が必要となります。
また、地面のどこを掘っても必ず井戸水を汲み上げる事ができるというわけではありません。
国土交通省が公開している全国地下水資料台帳調査を基に調査を行った上で、地下水採取が可能だった場合のみ井戸を掘削する事が可能となります。
しかし、事前調査を行った上で掘削したとしても、掘った位置が水脈からほんの少しずれただけでも、地下水を汲み上げられなかったり、十分な水量が確保できなかったというケースも珍しい事ではありません。
さらに、各地方自治体によっては、塩水化や地盤沈下を防ぐため揚水制限が設けられている事も。

井戸には『生活井戸』と『飲用井戸』がある
井戸は全て同じという訳ではなく、”浅井戸”と”深井戸”2つの種類があります。
生活用水向きな浅井戸
浅井戸は、地表から水面までの深さが8~20m程度と比較的浅い井戸のことを指します。
地中の固い岩盤より上にある水を使用するため、深井戸よりも掘削費用を安く抑える事ができます。
浅井戸は周囲の環境に影響されやすいため、有害物質が混ざってしまうなど水質が汚染されてしまう事も。
そのため、飲用水には不向きで、農業用、家庭菜園用、散水用、災害時用といった生活用水に使用されている事がほとんどです。
飲用水向きな深井戸
深井戸は、地層の中の固い岩盤より下にある水脈まで掘られた井戸の事。
深さは20m~50mほどで、固い岩盤を掘削するため掘削費用は浅井戸と比較すると高額になります。
岩盤よりも下にある水脈から水を汲み上げる深井戸は、水質や水量が周囲の影響を受けづらいため、水質検査をクリアすれば飲用水としても使用可能です。

維持費など費用面での井戸水のメリット・デメリット
井戸水は金額面でもメリットだらけだと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、メリットばかりではなく当然デメリットもあります。
上水道代は無料
井戸水使用で得られる最大のメリットは、上水道代が無料という点。
お庭に水を撒いたり、田んぼ、畑、家庭菜園などでたっぷり水を使ったとしても上水道代は0円。
ただし、井戸水を使用していても下水道代は支払う必要があります。
同じ自治体内であれば純粋な水道料金を見た場合、【上水道代+下水道代】と【井戸水(0円)+下水道代】を比較すると、月々の水道料金は井戸水を使用している方が半額程度に抑えられます。
生活の中でお水を沢山使用される方は、井戸水を使用する事で費用面での大きなメリットを得られるかと思います。
井戸掘削費用がかかる
井戸を新たに設置するとなると掘る深さによっても異なりますが、水質調査、井戸掘削工事、井戸ポンプの設置など含めて約20~100万円ほどの費用が必要となります。
維持費がかかる
井戸を掘って井戸ポンプを設置したら、そのまま井戸水や井戸ポンプが永遠に使用できるという訳ではありません。
飲用水に使用したい場合は特に、定期的な水質検査が必須。
理想的な水質検査の頻度は1年に1回程度で、検査項目の数や検査機関によっても異なりますが最低限の項目の検査を受けるとして、かかる費用は約1万円~2.5万円ほど。
また、5年に1度程度は井戸洗浄を行うのが理想的で、その費用は5万円~25万円程度。
その他、手動ではなく電動の井戸ポンプを設置した場合は、上水を使用する際には必要がない電気代がかかるようになります。
井戸ポンプの機種にもよりますが、井戸水を毎日2時間ほど使用したと仮定して、月々の電気代は約800円~1,000円ほど。
井戸ポンプの寿命は12年
国税庁によると、井戸ポンプの耐用年数は12年とされています。
設置から12年経過すると必ず壊れてしまうという訳ではありませんが、12年を経過した井戸ポンプは経年劣化による不具合が発生しやすくなってきます。
使用頻度や使用環境によっては7年程度で寿命を迎えてしまうケースもあれば、なんの不具合もなく20年以上使用できるというケースも。
いずれにしても、井戸ポンプは電化製品なのでいつかは寿命を迎えてしまいます。
寿命を迎えた井戸ポンプは新しい物と交換する必要があり、井戸ポンプの種類によっても異なりますが、工賃、井戸ポンプ本体代、古い井戸ポンプの処分費用、(深井戸の場合)配管やジェット・水中ポンプ、などの費用が必要になり、15万円~が費用相場となっています。
トータルでは金額的なメリットはほぼない
二人以上の一般家庭での水道料金の全国平均は、5,104円。
井戸ポンプの維持にかかるコストを月に均すと、約5,000~20,000円。
井戸水の使用で水道料金が半額に抑えられるとしても、トータルで考えると井戸水使用による費用面でのメリットはあまり得られず、上水道を使用するよりも高くついてしまうという場合も。

水質面から見た井戸水のメリット・デメリット
井戸水の水質にも、メリットデメリットがあります。
水質はピンキリ
井戸水=綺麗、おいしい
というイメージを持っている方も少なくないと思いますが、井戸水の全てが綺麗で美味しいというわけではありません。
井戸水は、お住まいの地域や井戸周辺環境などによってもまちまち。
浅井戸の場合は特に周辺環境に水質が影響を受けやすい特徴があるため、近くに工場や農地がある場合水質が汚染されるといったケースも。
井戸水と異なり、水道水は水道法第4条の水質基準と水道事業者の厳しい管理体制のもと処理。
塩素や次亜塩素酸置換などの消毒剤で細菌やウイルスなどの病原体を除去した状態の物が各家庭へと供給されているため、安心して飲用できるようになっています。
井戸水には様々なミネラル成分や菌などが含まれている事が考えられ、その中でも注意したいのがピロリ菌。
ピロリ菌とは?
ヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori) とは、ヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌(ピロリきん)と呼ばれることもある。
ヘリコバクター・ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌や MALTリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生に繋がることが報告されているほか、特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの、胃外性疾患の原因となることが明らかとなっている。
引用元:Wikipedia
ピロリ菌という言葉を耳にした事がある方も多くいらっしゃるかと思いますが、ピロリ菌は人の体内に入ると胃の粘膜に感染し、胃炎、十二指腸潰瘍、胃がんなどを発症させてしまう事も。
全ての井戸水にピロリ菌が含まれているという訳ではなく、ミネラル成分が豊富に含まれていたりとミネラルウォーターとして販売されるほど安全でおいしい物も存在します。
井戸水は水道水と異なり水質がピンキリのため、飲用水として使用したい場合は必ず水質検査を受けるようにしておきましょう。
水温が安定している
水道水は水道管を通って各家庭へと供給しているため外気温の影響を受けやすく、夏は生ぬるくて冬はキンキンに冷えた水が吐水されますよね。
井戸水(特に深井戸)は、外気温の影響を受けにくく年間を通して15~17度と一定の水温をキープ。
そのため、夏は冷たく冬は少しあたたかい水が吐水されます。

熊本県は井戸水王国
熊本県は日本の中でも地下水が非常に豊富な、井戸王国。
熊本県の中でも熊本市は、市民の水道水の100%が地下水で賄われています。
人口50万人以上の都市で(熊本市は人口約74万人)、水道水の全てが地下水で賄われているというのは日本全国でも熊本市のみ。
また、熊本県では一般家庭でも井戸水の利用率が高く非常にメジャーな事もあり、井戸や井戸ポンプに慣れている業者も数多くいます。
そのため、熊本県にお住まいの場合は水の安全性、おいしさ、井戸ポンプの設置なども含め、井戸水を使用するのは比較的【アリ】な選択肢となります。

まとめ
井戸水は良いイメージもありますが、水質が必ずしも良いとは限らない上に維持していくためのメンテナンス面を考慮すると、実は費用面も含めて結構大変です。
しかし、使用する水量によっては井戸設置によって大きなメリットを得られるケースも。
