台所用洗剤、トイレ用洗剤、浴室用洗剤などで目にする機会が多い”まぜるな危険”という文字。
他の洗剤と混ぜたらダメなんだろうなー?
とは理解していても、具体的に何と何を混ぜると危険なのかは分からない!という方も少なくないかと思います。

”まぜるな危険”とは?なぜ危険?
漂白剤、カビ取り剤、トイレ用洗剤など、”まぜるな危険”と記載されている物が数多く販売されていますよね。
まぜるな危険という記載が無い物でも、普段の掃除などで使用している洗剤類は、基本的に2種類以上の物を混ぜて使用する行為はNG。
全ての洗剤が混ぜると危険というわけではありませんが、例えばアルカリ性洗剤と酸性洗剤を混ぜて使用すると、中和されそれぞれの洗浄効果を十分に得られる事ができなくなってしまう事も。
そのため、基本的に洗剤は単品で使用するようにしておくのがオススメ。
まぜるな危険という記載がある洗剤に関しては、塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜると、有毒なガスが発生するため。
この有毒ガスは命にも関わるほど危険な物で、過去には死亡事故も発生しています。
1987年,徳 島県で主婦 が トイ レと浴室 を洗浄 中倒れ,救 急車で入院 したが,気 道部位 の浮腫 が原因 とみ られ る呼吸不全で死亡 した.キ ッチ ン用 カビ取 り剤 と トイ レ ・タイル用酸 性洗浄剤 を併用 していたため,家 屋内全体 に刺激臭が充 満 していた とい う.こ の事故 は,家 庭用品品質 表示法に基づ く表示は実施 されていたが,正 面 ラベルの表示が不徹底 であ ったため当協議会 を 創設 して業界全社の統一表示 を決定す ることになった
1987年に発生したこの死亡事故をきっかけに、洗剤などに”まぜるな危険”と表記されるようになりました。

まぜるな危険は何と何を混ぜるのがNG?
まぜるな危険という表記のある洗剤は、主に何と何を混ぜると危険なのか?
それは、主成分が次亜塩素酸ナトリウムの塩素系洗剤と、酸性洗剤を混ぜての使用。
2つの洗剤を混ぜる事により、人体に有害な塩素ガスが発生。
塩素ガス発生事故等
特に塩素を含む漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)と酸性の物質(おもにトイレ用の洗剤)を混合すると、有毒な単体の塩素ガスが遊離し危険な状態となる。このため、漂白剤や酸性のトイレ用の洗剤には「混ぜるな危険」との大きく目立つ表示がある(しかしこれだけの表示では、具体的に何と混ぜると危険なのかが示されていない)。このような表示がされる前(当時も小さな注意書き自体は存在した)には1986年には徳島県で、1989年には長野県で、実際に塩素系漂白剤と酸性洗浄剤を混ぜたことにより、塩素ガスが発生し死亡した事故が起こっている。
引用元:Wikipedia
塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜて使用すると、死亡事故に繋がってしまう事も。
こちらの動画では、塩素ガスが発生する際の様子をご覧いただけます。
一般的には、「塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜると塩素ガスが発生する。」と言われていますが、厳密に言うと塩素系洗剤に酸性の物質が混ざると塩素ガスが発生。
そのため、例えばハイターなどの塩素系漂白剤に、酸性物質であるレモンやお酢を混ぜるという行為もNGとなります。
代表的な塩素系洗剤の例
塩素系洗剤の主成分は、次亜塩素酸ナトリウム。
強い殺菌作用と脱色作用がありカビ除去などに効果が高く、プールの消毒にも使用されています。
市販されている塩素系洗剤の代表的な物は下記の通り↓
- キッチンハイター
- カビキラー
- ドメスト
- パイプユニッシュ
- さぼったリング
- かんたん洗浄丸
- 洗濯槽クリーナー
- スクラビングバブルトイレ用
- バブルーン
代表的な酸性洗剤の例
酸性洗剤は、pH値6未満の性質を持つ洗剤の事。
水回りに付着する水垢やウロコ、浴室の湯垢、石鹸カス、トイレに付着した尿石の除去などに用いられる洗剤です。
市販されているお掃除に使う酸性の物や、代表的な酸性洗剤は、下記の通り↓
- サンポール
- 水回り用ティンクル
- デオライト
- クエン酸
- お酢
- レモン汁
弱酸性は混ぜても大丈夫?
食器用洗剤の中には、酸性ではなく”弱酸性”の商品も販売されています。
弱酸性も酸性だから混ぜたら危険なのでは?と思われるかと思いますが、基本的にまぜるな危険という表示がされていない弱酸性の洗剤は心配ご無用です。
不安な方は、混ぜないように使用するのがベター。
Q.【成分・働き】「キュキュット クリア除菌」は液が弱酸性ですが、シンクの中で「キッチンハイター」の薄め液や「キッチン泡ハイター」と混ざっても大丈夫なの?
A.実際に試験を行い、問題ないことを確認しております。
「キュキュット クリア除菌」の原液は弱酸性ですが、水を含ませたスポンジにつけて泡立てたり、水で薄めると中性になります。引用元:花王HP 製品Q&A
アルコールやアンモニアもNG
塩素系洗剤には酸性の物以外に、アルコールやアンモニアを混ぜる行為もNG。
塩素系洗剤にアルコールを混ぜると、麻酔などにも使用されている”クロロホルム”が発生。
クロロホルムの毒性
中枢神経に作用するため、その特性を逆に利用して麻酔剤として利用されてきた。しかし大量に吸入すると血圧や呼吸、心拍の低下を引き起こし、重篤な場合は死に至る。また呼吸器、肝臓、腎臓に影響を与えることが確認されており、発がん性も疑われている。
引用元:Wikipedia
クロロホルムが発生すると、目や粘膜に刺激を感じたり、神経系や心臓に影響を受ける恐れも。
大量に吸い込むと命に関わる場合もあるため、塩素系洗剤とは混ぜないように注意する必要があります。
そして、塩素系洗剤にアンモニアを混ぜると”クロラミンガス”が発生。
クロラミンガスの人体への影響
プールの塩素臭は消毒用の次亜塩素酸ナトリウムではなくクロラミンに起因する。また、入泳者の目・鼻・喉の痛み・肌への刺激の原因である。クロラミンは投下された次亜塩素酸ナトリウムと、入泳者の汗や尿に含まれるアンモニアが反応して生じる。
引用元:Wikipedia
クロラミンガスが発生すると、粘膜に刺激を感じたり呼吸が苦しくなる恐れがあります。
症状が酷い場合は、肺炎を引き起こしてしまう事も。
お子様やご老人、ペットの排泄物の掃除や洗濯で塩素系漂白剤を使用する場合は、尿を完全に除去した状態で使用するようにしてください。
また、窓用洗剤にはアンモニアが含まれている物もありますので、ご使用の際は成分をチェックするようにしておくと安心です。

連続使用にも要注意!下水で混ざっても大丈夫?
意図して2つの洗剤を使用する方は、基本的にはいらっしゃらないかと思います。
しかし、お掃除をしている時に塩素系洗剤と酸性洗剤を連続で使用してしまい、塩素ガスが発生するというケースも。
例えば、ハイターなどの塩素系洗剤でキッチン周りの掃除や漂白を行う。
その後すぐに、キッチンシンクの水垢をとるためにお酢やクエン酸などを使用して掃除。
そうすると、残留していた塩素系洗剤と酸性の物質が混ざり、塩素ガスが発生してしまう恐れがあります。
どうしても2種類の洗剤を同じ箇所に使用したい場合は、最初に使用した洗剤をしっかりと洗い流してから次の洗剤を使用するようにしてください。
下水で洗剤が混ざったら?
お掃除が好きな方や、大掃除の時期などに色々な洗剤を使用したら、
「下水で洗剤が混ざったら、塩素ガスが発生するのでは?」
と、不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。
下水道が整備されている場合、2種類の洗剤を下水に流してしまったとしても、下水道の中で薄まるため過度に心配する必要はありません。
また、仮に下水で塩素ガスが発生したとしても、家屋の排水部分にはトラップが設置されているため、有害なガスが家屋内に侵入してくる事は基本的にありません。
排水トラップとは?
排水トラップ(はいすいトラップ)は、排水設備の配管の途中に設けられ下水道の悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐ器具や装置、または構造。害虫やネズミなどを屋内に進入させない字義通りのトラップの働きもする。
排水トラップは、排水経路の途中を水で常に遮断しておく構造を持つ(これを封水(ふうすい)または水封(すいふう)と呼ぶ)。経路を水で塞ぐことによりそこから先の空気や硫化水素等のガスを遮断する。また衛生害虫等の排水管から屋内への侵入を防止する。
引用元:Wikipedia
ここで注意していただきたいのは、排水トラップ部分で洗剤が混ざらないようにするという事。

排水トラップ
排水トラップは、画像の◯で囲んであるS字の部分に水を常時溜めておく事で下水と遮断。
稀ではありますが、2種類の洗剤を使用した後に、このS字トラップ部分で塩素系洗剤と酸性洗剤が混ざると、塩素ガスが発生してしまう恐れも。
ジェル状のパイプクリーナーを使用した後なども含め、洗剤を使用した後は排水トラップ部分に洗剤が残らないよう意識して水を多めに流しておくと安心です。

まぜるな危険を混ぜてしまった時の匂いは?
家族が塩素系洗剤で排水管の掃除をしている事に気が付かず、酸性の洗剤を使ってしまった!
カビキラーでカビ取りしていた事を忘れて、水垢掃除でクエン酸を使って混ぜてしまった!
など、混ぜないように注意をしていても、予期せず混ぜ合わせてしまうようなケースもゼロではありません。
万が一誤って塩素ガスを発生させてしまったら、臭いはあるのか?など気になりますよね。
塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜて塩素ガスが発生すると、ツンとしたわかりやすい刺激臭を感じます。
塩素ガスによる症状
塩素ガスは、目、皮膚、気道を強く刺激しますが、低濃度でも鼻やのど、目に刺激を感じ、吸った場合は、肺水腫を起こすこともあります。特に低濃度の場合、上気道への刺激が弱いため、ガスが肺の奥まで侵入し、遅れて肺水腫を起こして中毒症状が現れることがあります。また、高濃度の場合は、窒息感などの呼吸器症状や中枢神経症状などを起こし、死に至る場合もあります。
引用元:東京消防庁
また、塩素ガスは強い漂白作用があるため、刺激臭だけではなく目、皮膚、気道に刺激を感じるという特徴も。
洗剤とは明らかに異なる匂いを感じたら、塩素ガスが発生している可能性があります。

塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜてしまった時の対処法
万が一、塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜてしまい、塩素ガスが発生したら落ち着いて以下の対処法を行ってください。
換気をしその場を離れる
明らかな刺激臭を感じたら、換気をし速やかにその場を離れてください。
小さなお子様やペットなども、その場に近付かせないようご注意ください。
新鮮な空気を吸う
塩素ガスを吸い込んでしまい、頭痛、吐き気、目眩などの中毒症状を感じている場合は、新鮮な空気を吸い体調の回復を待ちます。
この際、できれば新鮮な外の空気を吸うようにしてくださいね。
体調が回復しないようなら病院へ
中毒症状が現れている場合や、意識が混濁する程の中毒症状が現れているようであれば、早急に病院へ。
命に関わるケースもありますので、症状が酷いようであれば救急車を呼んでください。
特に症状は出ていないけど塩素ガスを吸ってしまったかも…不安だな…
という方は、公益財団法人日本中毒情報センターへご相談ください。
水で入念に洗い流す
暫く時間を置いて、塩素ガスが発生した空間から刺激臭を感じなくなったら、洗剤を使用した箇所を水で入念に洗い流しておきます。
この際も、しっかりと換気をした状態で行うようにしてください。

注意点
塩素ガスは、ほんの1〜2分吸い込んだだけでも中毒症状が現れてしまうほど危険な物です。
そのため、そもそも塩素ガスを発生させない、発生しても吸い込まないようにしておく事が重要。
塩素系洗剤や酸性洗剤を使用する際は、以下の点に注意し使用するようにしましょう。
密閉した空間で使用しない
密閉した空間で塩素ガスが発生すると高濃度な塩素ガスを吸い込んでしまうため、死亡事故に繋がってしまう事も。
塩素系洗剤や酸性洗剤を使用する時は、換気をした状態で使用するのが鉄則。
必ず窓を開けたり、換気扇を回した状態で使用するようにしてください。
窓も換気扇もあるのであれば、両方で換気を行いましょう。
(換気扇は強にしておいてください!!)
マスク、ゴム手、ゴーグルなどを着用する
塩素系洗剤や酸性洗剤は単体でも刺激を感じる事があるため、使用時はマスク、ゴム手袋、ゴーグルを着用しておく事が推奨されています。
塩素系洗浄剤 使い方について
Q.作業するときの身支度について最低どの程度すべきですか?
A.スプレー製品は、使用中誤って目にはいったり、皮膚についたり、ミストを吸い込んだりしないように、保護用のメガネ、ゴム製等の手袋、マスクをする等の準備をしてから始めてください。マスクをする場合は、水で濡らした後かたく絞って使うとより効果があります。保護用のメガネにカビ取り用洗浄剤が付くとレンズ等のコーティングがはがれることがあります。ボトル製品もゴム手袋の着用を忘れずに。
引用元:日本家庭用洗浄剤工業会
洗剤は単品使いする
漂白する、カビを取る、水垢を落とす、など、用途によって洗剤を使い分けたいシーンもありますよね。
塩素系洗剤も酸性洗剤も、汚れを落とすのに大変便利な洗剤です。
しかし、混ぜ合わせてしまう事で危険が生じてしまう事もありますので、先述した通り基本的には単品で使用するようにしてください。
異なる洗剤を連続して使用したい場合は、最初に使用した洗剤を入念に洗い流してから使うのが鉄則です!

まとめ
塩素系洗剤も酸性洗剤も、使用方法を守り正しく使用すればカビ除去や汚れ除去に有効で大変便利な物です。
それでも、誤って混ぜ合わせてしまう事もあるかと思います。
万が一混ぜ合わせてしまっても、慌てず落ち着いて対処するようにしておく事が大切。
